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2006.08.12

8月10日~11日

 10日の朝、パフを獣医さんのところに連れていきました。二回目の抗癌剤投与です。
 一回目がうまくいったから今度も大丈夫、とは言えませんでした。体にとって毒でもある薬を入れるんですからね。どうなるかはわからない。点滴が外れて薬剤が血管の外に入ると筋肉の壊死が起こって最悪の場合断肢ということもあり得る、とも言われました。インフォームド・コンセントってやつでしょうけど、話を聞いてるだけで血の気が失せました。
 一応病院に一泊させて翌日引き取ることになっていますが、アクシデントや副作用の出方次第ではそのまま病院に留め置かれるかもしれない。すべては結果待ちです。

 そんな状態のままパフを預け、僕はひとり新幹線に乗り込みました。宇山さんのお通夜に参列するためです。
 蒲田のホテルにチェックインして喪服に着替え、川崎の斎場へ向いました。
 斎場で「宇山」という名前を眼にした瞬間、ああ、本当に宇山さんは死んでしまったんだと、あらためてショックを受けました。どうやら僕は、そのときまで心の底では宇山さんが亡くなったということを信じていなかったみたいです。しばらく、その場から動くことができませんでした。
 祭壇に飾られていた遺影、本格ミステリ大賞のトロフィと一緒に写っていた宇山さんのお顔が、とても柔らかで楽しそうでした。
 でもその遺影の前に立って焼香をしたときから、僕は感情のコントロールができなくなってしまいました。通夜振る舞いの席で誰彼かまわず抱きついて泣き出したり、その後で普通に喋ったり笑ったり、でもまた泣いたり。ほんとにもう、どうしようもなかった。
 ショートショートランドの時代からほぼ四半世紀、宇山さんは、僕にとっては肉親、本当に世話をかけてしまった叔父さんみたいな存在でした。ずっと会わないことがあっても、顔を合わせれば「やあ元気?」と言ってくれる。ちゃんと僕の仕事ぶりをみていてくれる。そして絶好のタイミングで素晴らしい仕事をさせてくれる(ミステリーランドのことです)、そんなひとでした。僕は宇山さんの懐の深さに甘えて、他の編集者が目もくれないようなへんてこな作品を書いてしまっても、宇山さんならきっと読んでくれる、そう思ってきました。
 でももう、宇山さんがいない。どうしよう? どうしたらいい?
 うろたえている僕の前に、喪主である宇山さんの奥様が来てくださいました。またまた感情を制御できなくなって抱きついてしまった僕を抱きしめて「ありがとう、いい本を書いてくれてありがとう」と言ってくれました。
 泣きながら、ああそうだ、そうなんだ、と思いました。何が「そうだ」なのか、僕にもわかりません。ただ「そうだ」と思ったんです。
 それで少し、楽になりました。
 その後、居酒屋を借り切っての通夜振る舞いの二次会(?)では、普通に振る舞うことができました。最後に奥様に挨拶するときには、また泣いてしまいましたけど。

 蒲田のホテルで一泊し、翌日は朝一番で名古屋に戻ってきました。
 駅で獣医さんに電話を入れると「引き取っても大丈夫」と言われ、膝の力が抜けるほど安堵しました。すぐに病院に向うと、パフは入れられていた檻の中で元気に跳ねていました。今のところ、問題はないようです。

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