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2018.08.16

Re:Story Of Our Life(その3)

 地図によれば、まずは海岸道沿いに北へ向かうことになる。四人は自転車をこいだ。
 椰子の木が連なる道路は真っ直ぐで、思わずペダルを踏む足も強くなる。一緒にももクロの歌を歌いながら走った。
「ねえ、ももクロってさ」
 歌の途中でアリが言った。
「すごくきれいだって、ほんとかな?」
「らしいよ。女神様みたいだって」
 タマシーが答える。
「女神様? どんなの?」
「だから、すごく美人」
「ケアリ先生より?」
「ケアリ? あんなのメじゃないって。アリおまえ、ケアリ先生が好きなのかよ?」
「そんなんじゃないって。でもさ……」
 それきりアリは黙り込む。モモスケはアリがときどき保健室に行ってケアリ先生と話をしていることを知っていた。今でも昔いじめられたときのことを思い出して辛くなるらしい。でもモモスケやタマシーやレニスには絶対そんなところは見せなかった。だからモモスケも、知らないふりをしている。
 キキッ、とブレーキの音がする。レニスが突然停まった。
「どうしたんだよ?」
 モモスケが尋ねると、レニスは何かを聞こうとするように耳に手を当て、
「今、お化けの声がした」
 モモスケも思わず耳をそばだてる。たしかに鳥の声は聞こえた。
「……でもこれ、カモメじゃないか」
「カモメだけじゃない。お化けもいる」
 レニスは言い張った。
「きっと、ももクロと一緒にいるんだ」
 レニスはときどき変なことを言う。だからみんなから馬鹿にされている。馬鹿にしないのは、ここにいる三人だけだ。
「よし、じゃあさっさとスタジアムに行ってももクロとお化けを見ようぜ」
 タマシーがそう言って、走り出した。
「……うん」
 レニスも後についていく。モモスケとアリもペダルをこぐ足に力を込めた。
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「ありそうでないもの、なあんだ?」
 休憩しているときに、いきなりタマシーが言った。いつもの遊びをしかけてきたんだな、とモモスケは思った。
「ありそうでないもの……タコの腹筋」
「ぶーっ。そんなの、なさそうでないじゃん。モモスケ、尻見せだな」
「じゃあタマシーは? ありそうでないもの」
「えっとだな……辛くないカレー」
「ぶっぶー。僕、この前辛くないカレーたべたもん。それはありそうである。タマシーこそ尻見せだ」
「待てよ。どっちかって言うとタコの腹筋のほうがダメだと思うぞ」
「そんなことないって」
 モモスケとタマシーが言い合っているとき、不意にレニスが言った。
「じいちゃんとばあちゃんの、キス」
 一瞬、モモスケもタマシーも沈黙する。
「それは……ありそうでないかも」
 タマシーが同意する。
「そうかなあ」
 モモスケは懐疑的だ。
「仲のいいじいちゃんとばあちゃんなら、きっとキスくらい」
「しないしない。歳取ったらキスなんか絶対しないって。な?」
 タマシーはレニスに同意を求める。そもそもその答えはレニスが言い出したものなのに。
「ほら、二対一で俺たちの勝ち。尻見せはモモスケだ」
「うっ……」
 モモスケがたじろいだとき、
「ねえ……」
 それまで黙っていたアリが声をかけきてた。双眼鏡で何かを見ている。
「あれ、見て」
「え?」
 モモスケもタマシーもレニスも一斉に双眼鏡でアリが指差したほうを見た。
 知らないじいちゃんとばあちゃんが見えた。ふたりでキスをしていた。
「あ……」
 タマシーが声を洩らすのが聞こえた。モモスケはにんまりとして言った。
「おまえたちの負けだ」
「そんなあ……」
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 夏草の向こうから一両編成の電車がやってきた。
「よし!」
 タマシーが線路から少し離れてスタンバイする。こういうとき、絶対に怖じ気づかないのがタマシーだ。レニスは後からついていって並ぶ。モモスケとアリはその横で見届け役になる。
「今だ!」
 タマシーは自分で号令をかけて、ズボンを下ろした。後ろを向き、真っ白な尻を突き出す。レニスもそれに続いた。
「見ろ! 見ろ見ろ見ろ見ろおおおっ!」
 電車の車窓に向かってタマシーが叫んだ。
 電車が通りすぎる。アリが手を叩いて笑う。モモスケも笑った。
 電車が行ってしまった後、タマシーは尻を出したままぴょんぴょん飛び跳ねた。
「どうだ! やってやったぜ! やってやったぜ!」
「やって、やったぜ」
 レニスも唱和する。四人は大笑いした。
 それから無人駅のホームに座って、また歌った。手を取り合って、大声を張り上げた。

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