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2005.05.15

うつのみやこども賞表彰式&講演

 うつのみやこども賞の表彰式と記念講演をするため宇都宮に行ってきました。
 朝8時過ぎに名古屋の家を出て昼前には宇都宮に着いておりました。意外に早いですね。

 改札口で出迎えたくれた宇都宮図書館の方に案内されて車で図書館まで一直線。ちょうどお昼時になので図書館隣の文化会館のレストランで、「宇都宮子どもの本連絡会」 のメンバーで今回の賞のオブザーバーもされている方おふたりと昼食をいただきました。以前からメールのやりとりをしていたし、僕とほぼ同年代なので、話題はいろいろとあって楽しかったです。

 式までには少し間があったので宇都宮図書館の副館長さんと「宇都宮子どもの本連絡会」の会長さんにお話を伺いました。宇都宮市では「宇都宮子どもの本連絡会」が中心となって子供への本の読み聞かせなどの活動を活発に行っているとのこと。大人の価値観を押しつけるのでなく、子供が本当に読みたい本を見つけるための手助けをすることが必要と考えて実行していらっしゃると聞き、正直宇都宮の子供たちが羨ましくなりました。
 僕、子供の頃はまったく本を読まなかったんですよね。というかほとんど本嫌い。どうしてそうなったかというと小学校時代に無理矢理読書感想文を書かされたり、図書室に押し込められて黴の生えてるような古臭い本を無理に読まされたりしたからで、つまり上からの押しつけに反発して本を嫌いになってしまった。でも宇都宮市では子供たちの自主性を尊重した活動がボランティアを中心に確立しているようです。こういう大人が近くにいる子供は、本が好きになるだろうなあ。

 さて、いよいよ表彰式。図書館内の会場には40人から60人程度のひとが集まっていました。当然ですが子供たちのほうが多かったです。司会進行役は大人が担当されてましたが、表彰式の授与と花束贈呈は子供の手で行われました。いやもう、照れましたね。でも、ほんとに嬉しかった。表彰状もらうなんて、生まれて初めてかも。
 その後は選考委員を務めた子供たちへの表彰と、僕を挟んでの記念撮影。それからいよいよ太田忠司うつのみやこども賞受賞記念講演となりました。
 まず最初に賞をいただいたお礼を述べると同時に、僕がこの賞をもらっていい理由について一応説明しておきました(このへんは『黄金蝶ひとり』を読んだひとならわかってもらえるでしょうね。作品の冒頭で「このお話は太田忠司が書いたんじゃない」と書いてあるんです。でも本当は僕が書いたんだよ、と一応のエクスキューズをしておいたわけで)。
 その後「じつは人前で講演をするのはこれが初めてのことです。どうやって話したらいいのかわからないのでカーネギーというひとの書いた『話し方入門』という本を読んでみたら、リンカーンもルーズベルトも最初の講演では失敗したと書いてありました。こんな偉大なひとでさえ失敗するんですから、僕が失敗しても当たり前です。だから最初に言っておきますけど、今日の講演は失敗します」と宣言しておきました。これで逆に気が楽になって、前もって子供たちからもらっていた質問(子供の頃は何になりたかったですか。どうやったらお話が書けるんですか。小説を書いていて楽しいことは何ですか。といったこと)に沿って、自分の子供時代から小説家になるまでの経緯、『黄金蝶ひとり』という作品について、そして小説家という仕事について、といった三つの柱を立てて話をしました。といってもあっちに行ったりこっちに行ったり引き返したり後戻りしたりのシッチャカメッチャカな話しかたで、しかも途中で話に詰まると「ほら、そろそろ話すネタがなくなってきたぞ」とか「もう話すことがないぞ」とか独り突っ込みをして笑いを取ったりして。で、いよいよ話すことがなくなってきたら「じゃ、そろそろ質問コーナーに」と逃げを打って、これでなんとか一時間過ごしました。いやはや綱渡りだわ。
 子供たちからの質問は結構鋭くて「鍾乳洞で剣崎たちはどこから出てきたんですか?」という触れてほしくないウィークポイントをしっかり突っ込まれましたよ。「うーん、それはね、きっと裏口があったんだよ。本当は書かなきゃって思ってたんだけど、忘れちゃったんだよね」としか答えられなかった。あと、「名古屋弁喋ってください」というのにも怯みましたね。いきなり喋れと言われるとネイティブな僕でもすんなりとは出てこないです。

 ともあれ、なんとか予定通りにこなせて、無事に終わらせることができました。緊張したけど、それ以上に楽しかったです。表彰式の写真はあとから送られてくるかもしれないから、届いたら日記のほうにもアップしておきましょう。
 そのかわり、というわけでもないけど、家に帰ってから子供たちにいただいた花束を持って写真を撮りました。

hanataba

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コメント

本当にお疲れさまでした。
でも全く「シッチャカメッチャカ」ではありませんでしたよ。
「もう話すことがないぞ」というのは合いの手のようなもので、
それをおっしゃってからさらに続いて話されていたので、
とても「初めて」とは思えませんでした。
(勝手に「今年度初めての講演会」なのかと勘違いしてた私です。)
お話に聞き入ってましたから、「そろそろ質問に・・」と振られたときは、少々焦ってしまいましたけれど。(笑)
確かに剣崎の件は鋭かったですねぇ。
名古屋弁も急に話せと言われてもねぇ。
(私も急に栃木弁を話せ、と言われたら、困ります。)
でも、とても楽しい時間でした。
その場に居た方達は皆、そう思った事と存じます。
緊張から来るお疲れは、パフちゃんやモモちゃんが癒してくれたでしょうか。
大きな花束、名古屋まで持ち帰るのは大変ではなかったですか。


投稿: ムーク | 2005.05.16 08:46

 講演お疲れ様でした。

 ちなみに名古屋でも、現在ではボランティアの方や図書館の司書が学校に出向いての読み聞かせやブックトークを多数行っております。私も、かつて名古屋市N図書館にいたときから、名古屋市T中央図書館に異動した現在まで、何回も学校に出向いております。子どもたちや学校の反応もおおむね良好です。

「大人の価値観を押しつけるのでなく、子供が本当に読みたい本を見つけるための手助けをすることが必要と考えて実行していらっしゃる」このあたりは、私を含め現在名古屋で読みきかせをおこなっている人たちがほとんど理解・実践していると思います。(中には・・・かもしれませんが)

 先生の「子ども時代の本嫌いの要因」はかなり同意です。私の場合は演劇がそれでした。体育館に押し込められて、よいこむけの地元の児童劇団の小芝居を見せられて、少しでも動けば注意が飛ぶ・・・。このおかげで私は今でも演劇が見られません。

 結局、子どもたちが喜んでくれること、楽しんでくれることが一番だと思っています。

投稿: 篠田 昌受 | 2005.05.16 23:32

クリックの不具合で2回送信されてしまいました。どちらかの削除をお願いいたします。失礼いたしました。

投稿: 篠田 昌受 | 2005.05.16 23:36

太田先生、こんばんは。
講演会、とても楽しかったです。ありがとうございました。
「ブラウントゥリー=茶木村」には、思わず「そうだったのか!」と。

これからも、機会がありましたらぜひ、子どもたちに向けた作品も書いていただきたいなあと思いました(ミステリーランドはひとり一作でしょうから、例えば青い鳥文庫とか)。

今回の講演のレポを書かせていただきました。拙いメモ書き頼りに書いたので、聞き間違っている箇所もあるかと思いますが‥。
もしよろしかったら、↓こちらです。http://www.geocities.jp/y_ayatsuji/step2/rep/repo-a.html

投稿: mihoro | 2005.05.17 01:59

>ムークさん
 お世話になりました。
 本当に素敵な経験をさせていただきました。
 あらためて本を読むというのは素晴らしいことなんだな、そんな本を書くことができるのは幸せなんだな、と思いました。

>篠田 昌受さん
 重複したコメントは削除しておきましたよ。
 名古屋でもそういう取り組みがされていたんですね。不勉強なもので知りませんでした。きっと僕が子供の頃より、そういった活動は活発になっているんでしょうね。
 どんなことにせよ、強制されたものにはなかなか魅力は感じませんよね。やっぱり本人が興味を持たないと。でも演劇はですね、一度面白いものを観てしまうと、過去のトラウマなんて吹っ飛ぶと思いますよ。僕も学芸会のお芝居が嫌いでしたが、今じゃ好きな役者や演出家の芝居を観るために一生懸命働いてお金を稼ごうって気合を入れるくらいです。

>mihoroさん
 素敵なレポートありがとうございました。
 僕の支離滅裂な話を、こんなにもきちんとまとめてくださるとは。感謝感謝です。
 あらためてブログのほうで紹介させてくださいね。
 子供向けの小説、まだまだ書きたいです。

投稿: 太田忠司 | 2005.05.17 09:24

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