ガメラで泣く
「小さき勇者たち~ガメラ~」を観てきました。
結論から言えば、僕にとっては傑作でした。 「僕にとっては」と言い訳めいたことを書くのは、平成ガメラとか昨今のリアル志向怪獣映画を支持する「大きなお友達」には不満があるだろうなあ、というのも感じたからです。なんたってガメラ(トト)の造型が可愛すぎる。 でもねえ、ジュブナイル映画として、これはとてもいい。
主人公の少年が母親を交通事故で亡くしたばかりだったり、窓を向かい合わせた隣の家にはちょっと年上な幼馴染みの女の子がいて、その子は気が強いんだけど心臓の病気で手術しなきゃいけなくて、とベタな設定が続いて最初はげんなりしてたんですが、少年がガメラの卵と出会って生まれてきた子ガメラを大事に育てて、といったあたりから、やはりベタだなあと思いつつも引き込まれていきました。描き方がね、丁寧なんですよ。少年の気持ちを掬い取るように描いていく。
で、悪い怪獣が現れて、トトがまだ子供なのに立ち向かっていって……この後、傷ついたトトのために人間の子供たちがする「リレー」のシーンで僕、泣き始めました。そこからはもう滂沱の涙。
リレーの最終ランナーは当然のことながら主人公の少年で、少年が持ってきたあるものでトトは悪い怪獣と互角に戦うことができる。でもこの映画のガメラって、いざとなったら自爆して敵と相討ちしてでも人間を救おうとするって設定なんですよね。つまりトトを助けても、トトは自分たち人間のために自爆して死ぬかもしれない。少年はずっとそのことで葛藤していて、でも最後には傷ついたトトの許に駆けていって、そこでトトにあることを言う。 この言葉を聞いたとき、もう涙が止まりませんでした。今こうしていても、泣けてきます。
怪獣映画って昔から子供のものと見なされていて、でも本当に子供のために作られた良質な映画というのは少なかったと思います。昭和のガメラ映画なんて、当時観に行ってた子供の頃の僕でさえ「子供を馬鹿にしとるんかい」と憤ったくらいですから。「ガメラ対ジグラ」だったかな、子供三人を誘拐した宇宙人が「子供の命を助けたければ人類は降伏しろ」と脅すと、自衛隊の中隊長クラスの男が「子供の命には換えられない。人類は降伏する」なんて言うんですよ。おまえが決められるのかよ、ってなもんです。
そういう「子供だまし」なところを子供だった僕は一応棚に置いといて、怪獣映画として楽しんでいたわけです。 しかし、今回のガメラは違います。ちゃんとした子供のための映画になってます。物語として甘い部分は多々あるものの、怪獣映画というジャンルに初めて生まれた良質なジュブナイル映画かもしれません。
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