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2009.05.25

涙くんさよなら

 希求座の舞台「涙くんさよなら」を観てきました。
 会場がうちから歩いて2分のところにあるので、とても楽でありましたよ。 ただ、とてもとても寒かった。冷房なんか入れる必要ないのに。

 内容はいわゆる社会劇というのでしょうか、テーマは薬害C型肝炎問題。生まれたときにC型肝炎ウイルスに汚染された止血剤を投与されたせいで20歳過ぎてから発病してしまった若者が、恋人を失ったり治療薬の副作用に苦しんだり自分の運命を呪ったり、でも未来のために国と製薬会社を相手取っての訴訟を決意するという話。なんというか直球そのもの、とてもストレートな物語です。
 脚本も演出もとても丁寧に作ってあって(3時間の長丁場!)、薬害問題というのがどういうものかということを親切に教えてくれます。ただそれだけに、なんというか、主張を前面に押し出しすぎていて、芝居としての面白みには欠けるかなあ。
 それを補うのがトリックスター的役割を担わされ、いろいろな場面に登場してくる姫子さんというゲイボーイ。彼の歌や踊りやお喋りが辛うじて演劇空間を作り出すことには成功しているんだけど、結局彼も薬害を告発する側に立ってしまうので、すべての登場人物が同じ方向を向いてしまって演劇としての膨らみが足りなく感じました。
 こういうテーマの作品に対して批判めいたことを言うのはとても難しくて、たしかにC型肝炎の患者さんたちに非は一点もなく本当に被害者でしかないと思うのだけど、では加害者である国や製薬会社は100%悪人として弾劾できるんだろうか、という疑問がふと湧いてしまいます。彼らには彼らの主張があるはず。それを悪人の戯言程度にしか紹介してないってのも、どうにもアンフェアな気がしてしまうなあ。
 僕が好んで観に行くのは、シュールでコミカルでダークなお芝居なので、そもそもの指向が違ったんでしょうね。

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