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2009.11.10

THIS IS IT

THIS IS IT」観てきました。

この十年、マイケルについての報道は醜聞ばかりで、テレビに映る姿も気力も体力もなさそうな、はっきり言って廃人みたいな姿でした。だからロンドンで50回公演なんて話は信じられなかったし不可能だと思ってました。マスコミの論調も、そんな雰囲気でした。
 でも、残されていたリハーサルの様子をこうして眼にして、自分の愚かさを恥じました。歌って踊る彼の姿は、下手な憶測や同情など欠片も必要ない、まさに完璧なエンターテイナーのものでした。50歳にしてあの体のキレはなんだ。あの歌声の瑞々しさは。何より全身から立ち上る唯一無二の存在でしかない佇まいは、何事だろう。

 ステージは一曲ごとに趣向を凝らした豪華なものでした。あれを観て、マイケルはやっぱりプロモーションビデオの申し子だったんだなと思いました。観客に最高のプロモを見せようとしてたんだと。音もダンスもアルバムやプロモオリジナルを踏襲することを第一に考え、その上でさらに高みを目指している。つまり伝説として客の記憶の中で膨らんでしまったイメージを、そのまま見せてあげようとしてるわけです。なんてハードルの高いことをしているんだろうと何度も呆れ、圧倒されました。マイケルはファンの過大な期待を全部背負う気でいたんです。そしてそれが、できていたんです。

 リハでは何度もマイケルが駄目出しをするシーンが出てきます。一音も疎かにしない徹底ぶりでした。彼の頭の中には完璧な音楽と映像があったようです。それをみんなに伝えようとする姿は、でも謙虚で愛情に満ちたものでした。編集でそうなっているからかもしれないけど、事を荒立てたり怒ったりするシーンはひとつもなかった。きっと怒ることが嫌いだったんだろうな。トップに立っていて怒りで自分を表現できないというのは、ある意味不幸なことだったのかもしれない。周囲とのギャップを埋められない苛立ちなんかも、溜め込んじゃってたかもしれないから。
 その優しさが死を早めたのかもしれないと思って、少し辛くなりました。

 劇場で「THIS IS IT」のCDを買いました。帰ってすぐに聴きました。当分マイケルに浸ってしまうと思います。

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